「……なに、物騒なモノ持ち歩いてるのよ、紫」
音もなく目の前に現れたのは、紫色のドレスに歳を考えないリボンがあしらわれた帽子を被った女性――スキマ妖怪こと八雲紫だ。
神出鬼没に定評がある彼女だから、突然目の前に現れることは別になんでもない普通のことだ。
問題があるとすれば、無造作に紫の手に握られている紅い剣。
見たこともないデザインに、禍々しいまでの紅色。巫女とのしての直観が危険を報せている。
「さっきスキマに流れ着いたんだけど、どうやら遠い異国の鬼が使っていた剣みたいなのよ」
「へぇ……鬼ねぇ」
“鬼”と言われて浮かんでくるのは、宴会好きのちんまいのと地下で出会ったデカイの。
だけど、目の前の剣が似合うかというと、疑問符が付く。
むしろ訳の分からないもの同士、紫の方が似合っているような気もする。
「ホントに鬼の剣なの?」
「“異国”の……ね」
「ふーん」
もっとも、そんな事はどうでも良い。
問題なのは、一日の大半を寝て過ごし冬眠までする筋金入りのぐうたら者である紫が、わざわざ見せに来たことだ。
何か良からぬ事を企んでいるのは明白である。
なるべく自然を装った動作で服の中に手を伸ばす。指先に触れたのは、「夢想天生」――私の持つ最強のスペルカード。
やり過ぎかもしれないが、紫相手に警戒しすぎることはない
「で、その異国の鬼の剣がどうしたって訳?」
「調べたら、ちょっと面白い魔法が封じられてたのよ」
そう言いながら、紫が剣を振るう。
身構えていたこともあり、流れるようにスペルカードが切られる。
完全に振り下ろされるより前に、紫へ弾幕が殺到する。
流石に大妖怪の紫といえども、不意打ちの「夢想天生」を受ければただでは済まない。
「っ――!?」
はずだったのだが、耐え難い衝撃が全身を襲う。
“まるで「夢想天生」の直撃を受けた”かのような。
「ダメよ、霊夢。いきなりスペルカードなんか撃ったら、危ないわよ?」
「えっ……ええっ――!?」
仰向けに倒れ伏した私に、窘めるような声が降りかかる。
自分の声のような、しかし何か違和感のある声。
驚いて口をついて出た声は、やはり同じ様な違和感のある紫の声。
「術者と対象者の精神を入れ替える魔法が封じられていたのよ。どう? 驚いた?」
「それは……まあ……」
両手で拾い上げた紅い剣を抱えて無邪気に笑う私……の姿をした紫。
本来の姿なら歳を考えろと悪態をつくところだが、霊夢の姿でやられると子供っぽさが妙に似合っている。認めたくないが可愛い。
「さて……体が入れ替わったらヤることは一つよね?」
「はぁ? ……って、ちょっと待ちなさい!」
訝しげな声を上げる私の前で、剣を片手で持ち直すと、空いた手を胸元へ持っていく。
とても嫌な予感がする。博麗の巫女の勘など使わなくても、嫌な予感しかしない。
しかし、流石は私の最強スペルである。あの大妖怪の紫の体と言えども、直撃のダメージはまだ回復し切れていない。
おかげで実力行使が出来ず、声で制止することしかできない。
「んっ……」
「あぁぁ……やっぱり……」
霊夢の体から悩ましい声が上がる。
胸元に宛がわれた手は軽く握られ、巫女装束越しに膨らみかけの女性の象徴が押しつぶされる。
自分の体からあんな声が出るなんて、不思議で――そして、どうしようもなく恥ずかしく感じる。
「ふあぁ……小さい方が、んっ、感度が良いって、本当ね」
「気が済んだら、さっさと止めてよね。こんな所誰かに見られたら……」
平常心を取り繕いながら、紫の声で紫を窘める。
こんな所を見られでもしたら、表を出歩ける気がしない。
「大丈夫よ。結界を張っておいたから」
言われて周囲を見回すと、私達を囲むように境界が見える。
結界がこのように視覚的に見えるのは不思議な光景だが、おそらく紫の能力の一端なのだろう。
良く注意して観察すると、他にも沢山の境界が目に飛び込んでくる。
「だから、あなたもして良いのよ?」
「えっ……?」
「私の体……好きにしてくれて良いわよ……?」
何をバカなことを、と目線を降ろせば、服の上からでも分かる大きな膨らみ。
重くて肩が凝りそうだとか、当たり判定が大きくなりそうだとか、そんなことを言いながらも、羨ましくないと言えば嘘になる。
まだ成長途中だと言い聞かせても、目の前の完成形には嫉妬せざるを得ない。
「ぁ……」
服越しにそっと触れると、じんわりとした痺れが広がる。
波紋のように全身に行き渡り、もどかしい熱を残して消えていく。
思わず手を握ると、予想外の弾力性で指を受け入れる。
そして、二重三重と広がる快感の波紋が脳髄を侵していく。
「んっ……はぁ……っ――」
「ぁん……いいわぁ……」
気付けば手が勝手に動いていた。
甘くとろける快楽を求めて、紫の胸にさらなる陵辱を加える。
絶え間なく広がる快感の波紋が理性を剥ぎ取り、本能をむき出しにする。
陵辱の手を止めるものはもはや存在しない。
本能が求めるままに紫の胸を犯していく。
そのうち服越しの刺激に満足出来なくなり、隙間から手を差し込む。
素手のつもりだったが、肌を滑るのは滑らかな手袋の生地。思わぬ感触に身悶える。
しかし、肝心の場所へは下着が邪魔をして辿り着けない。
サラシとはまた違った不思議な下着で、どう外していいものかよく分からない。
仕方なしにドレスごと破いてしまう。紫の境界視の能力で何処に力を入れればいいかは何となく分かる。
窮屈な下着から解放された乳房はすぐに私の手の中に捕らわれる。
その手には先ほど同様手袋が嵌められたまま。
外すことすらもどかしいし、何より手袋の感触が気持ちよいのだ。
乳房を擦る手袋の生地が、神経を焼き切らんばかりの快感を流し込む。
それに抗うすべは無かった。
紫も紫で巫女服をはだけて直接胸を弄っている。
しかし、胸に伸びる手は左手のみ。
右手は更に下、スカートの中に潜り込んでいる。
漏れ聞こえる水音が頭の中に響く。
胸を犯す手もそこそこに彼女を注視してしまう。
「……」
「っ――」
一方的に見つめていたはずが、気付けば見つめ返されていた。
ほんのりと上気した顔を挑発的に歪めながら、スカートの端を摘んでゆっくりとたくし上げる。
布地の奥から現れたのは、粘液で濡れてテラテラと光る縦スジ。
自分の体のはずなのに、とてもじゃないがそうとは思えない
全く初めて見る光景に、目が離せなくなってしまう。
紫は私の視線などものともせずに、たくし上げたスカートの端を咥えて、縦スジに指を宛がう。
くちゅ、と卑猥な水音を立てながら、紫の指が縦スジに飲み込まれる。
指が深く入り込んで行くにつれ紫の胡散臭い笑みが歪んでいく。
しかし、咥えたスカートは離さない。あくまでも見せつけるつもりらしい。
私も同じ事をして良いと。
私も同じ事をしろと。
素直にその通りにするのは癪だし、こんな異常な行為はさっさとやめさせなければならない。
しかし、やられっぱなしなのは面白くない。
……などと理屈をこね回す必要は始めから無かった。
体が熱い
疼く
物足りない
もっと欲しい
原初的な本能の欲求を抑えることなど、今の私にはできっこない。
紫がしたようにスカートをたくし上げて、その奥に手を差し込む。
行く手を阻む薄い布きれはドレス同様破り捨てて、紫がしたように指を当てる。
「――――」
その瞬間意識は真っ白に反転した。
空を飛ぶときのような浮遊感に包まれながら、スッと力が抜ける。
膝を折ってへたり込むと、同じように座り込んだ紫が目に入る。
してやったりな表情が気にくわないけど、今更止める事なんて出来ない。
それに、紫だってニヤニヤ笑いながらも手は止まっていない。おあいこだ。
精一杯不敵な笑みを返そうとしたけど、自分の指がもたらす快感に邪魔されて、上手く笑えている気がしない。
指の動きが加速するにつれ、正面の紫の顔すら白く霞んでくる。
もう、何も考えられない。
股間と胸と、それらを辱める指以外、真っ白に染まっていく。
そして、あの浮遊感と共に意識もこの白の中に飲み込まれ……
「あ……れ……?」
目の前にあったのは、見慣れた神社の寝室の天井だった。
起き上がって辺りを見回しても、見慣れた風景が広がっているだけ。
視線を自分の体に落とせば、紫のドレスではなく、紅い巫女装束。
髪の毛を一房握ってみれば、流れるような美しい金髪ではなく、地味な黒髪。
間違いなく博麗霊夢の体だ。
「夢……?」
そうだ。きっと夢に違いない。
幾らデタラメな紫でも、人格を入れ替えるなんて芸当出来っこない。
しかし、夢だとしたら、何故あんな夢を見たのだろうか。
紫と入れ替わって……
「っ……」
その先を思い出して頭が沸騰した。
夢とは言え、私はなんてことをしてくれたんだ。
紫の目の前で……
「あいつったら何処行ったのよ……」
(っ――)
今まさに思い浮かべていたその人の声が耳に飛び込んできて、心臓が止まりかける。
本当に居て欲しくない時に居る妖怪だ。
縁側から聞こえた声は、段々と神社の奥のこの部屋へと近づいている。
誰かを捜しているようだが、「あいつ」としか言わないので、誰かまでは分からない。
……それにしても何か違和感がある。
あいつが誰かのことを「あいつ」なんて言うことがあっただろうか?
なんだか嫌な予感がする。
こういった時の私の予感が、何の因果か良く当たる。
今は当たって欲しくないんだけど……
「ああ、霊夢じゃない。紫……じゃなくて、あの天人見てない?」
ゆかれい入れ替わりネタのリテイク版。いつも通り意味不明。